枚方団地アーカイブ
1956-2021

枚方団地は、2021年春、再開発事業によって65年の歴史に幕を閉じ、2024年4月、「OPH枚方駅前」として新たに生まれ変わりました。1956年の建設当初の時代背景やストーリーを振り返りつつ、入居者や地域の方々へのインタビューも交え、時代とともに変遷していく団地や地域、その中で営まれてきた暮らしの様子をお伝えします。
枚方団地について
1956年、枚方市に誕生した枚方団地は、当時の戦後復興期による住宅不足を解消するため建設されました。枚方市は人口5万人の小規模な市でしたが、大阪や京都への良好なアクセスにより、ベッドタウンとして発展。全120戸から成る集合住宅で、京阪電鉄「枚方市駅」から徒歩1分という立地と、周辺の交通インフラの整備によって団地はすぐに多くの家族にとって魅力的な居住地となりました。団地建設は駅前の発展にも寄与し、枚方市の人口増加と都市化に貢献。現在も地域の重要な一部としてその役割を果たしています。
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枚方市駅前上空写真 -
枚方団地
建物概要
建物概要 | |
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建設年度 | 昭和30年 |
所在地 | 枚方市新町1丁目1 |
敷地面積 | 0.71ha |
管理戸数 | 中層・5棟 合計120 戸 |
構造 | RC 壁式構造 |
住居タイプ | 1LDK・2K・3K・3DK |

施設概要 | |
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汚水処理 | 公共下水 |
ガス方式 | 都市ガス |
集会所 | 独立 48.72㎡ |
自転車置場 | 12ユニット |
駐車場 | 27台 |
EV設置 | 無し |

建設当時の図面
平面図
History Contents
当時の枚方団地の暮らし
新たな生活様式と
コミュニティ形成の始まり
それまでの日本の伝統的な木造住宅とは異なり、近代的な建物とされていた団地は、鉄筋コンクリート造の4〜5階建てが主流で1DKや2DKといった間取りの住戸が多く見られました。枚方団地では、時代の先端であった人造石の流し器や一口ガスコンロ据付け台、造り付けの収納棚が採用され、トイレや台所も室内に設置されたため、大幅に住環境が向上しました。また、団地内には共有スペースや公園が整備され、住民同士の交流が促進される設計が施されており、単なる住居という枠を超えてコミュニティ形成の場にもなっていました。
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外観 -
室内 -
室内 -
室内より見た洗面所、玄関
発展する枚方市駅前と周辺地域
枚方団地の利便性と街の魅力
京阪枚方市駅から徒歩1分という絶好の立地にある枚方団地は、交通の利便性に恵まれた住環境です。枚方市駅は、大阪市と京都市を結ぶ主要路線の京阪電鉄に位置し、都市部への通勤・通学が容易なことから住民にとって便利な生活拠点となりました。また当時から商店街や市場が広がり、食料品や生活必需品が手軽に手に入る環境が整っていました。駅の高架化に伴い、交通渋滞の解消や安全性の向上が図られると同時に、駅周辺の再開発が進み更に商業施設も充実。枚方団地はこのような駅前立地の発展とともに、地域における重要な生活拠点としての地位を築いていったのです。
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枚方市駅前南口(1955年前後) -
駅前広場が整備され百貨店も進出した枚方駅前再開発事業(1975年) -
高架化が進む枚方市駅(1991年) -
第一回枚方まつりの様子(1976年)
「出典:市制施行65周年記念冊子『写真で見るひらかた今昔』 - 枚方市(枚方市 観光にぎわい部の許可を得て使用)」
枚方団地の温かな日常
都市化の中で育まれる住民の交流
枚方団地周辺が徐々に都市化を進める中、高度経済成長期にはテレビや洗濯機などの電化製品が家庭に浸透し、便利な生活環境が整備されていきました。その中でも枚方団地では屋上に干された洗濯物が風に揺れる風景が日常的で、住民同士がそのそばで自然に挨拶を交わしながら、繋がりを育んでいました。広場では、子どもたちの元気な笑い声が響き、団地内の共有スペースも住民同士の交流を活性化させ、住民たちは温かな交流の中で、日々の安心感と共に穏やかな暮らしを送っていました。
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住棟外観 -
住民同士の交流が生まれた屋上の洗濯スペース -
集会所では民謡やパソコン教室などの活動も盛んに行われた -
地域の子供たちの遊び場となった団地内のプレイロット
枚方団地の新しい未来へ
枚方団地の建替プロジェクトの発足、
地域社会と未来を支える住まいへ
枚方市駅周辺の様々な課題に対応するため、枚方市による「枚方市駅周辺再整備ビジョン」が2013年3月に策定されました。このビジョンに基づき、公社も再開発組合員として参画し、枚方団地の建替プロジェクトが進められることになりました。枚方団地の歴史的価値を尊重しつつ、バリアフリー設計や最新の環境配慮型設備の導入など、利便性の高い住宅へと建替えることで、駅前交通広場の拡充や地域のにぎわい創出、さらには枚方市のさらなる発展を支える重要な取り組みとなっています。
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建替前の団地の外観 -
シンボルツリーとして長年住民に愛された桜の木 -
欄間 -
台所
OPH枚方駅前の誕生
環境配慮型の次世代団地、
OPH枚方駅前で始まる新たな暮らし
枚方団地は、さらなる発展を目指し、環境配慮型の次世代団地「OPH枚方駅前」として生まれ変わりました。幅広い世代の現代の生活ニーズに合わせた設計が施され、ZEH-M Oriented基準に基づく高い省エネ性能を持つ建物に刷新されました。断熱性能や省エネ設備が強化されるとともに、スマートホーム技術や災害時にも対応可能な設備も導入されています。枚方団地の歴史を継承しつつ、未来へつながる新しい暮らしがこの場所で始まっています。
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未来と環境に優しい省エネ住宅「ZEH-M Oriented」取得 -
リビングルーム -
建替前当時の居室の欄間が再利用された集会所の和室 -
住民同士や地域の交流の場となる新しい集会所 -
第36回「住生活月間」国土交通大臣表彰を受賞
インタビュー
入居者や地域の方々へのインタビューを実施させていただきました。
当時の思い出を振り返りながら、変わりゆく枚方駅周辺について感じられたことや、これからの時代の暮らしへの思いなどをお伺いしました。