過去・現在・未来

人生の半分以上を過ごされた枚方団地の思い出―団地での暮らしの中で生まれた交流

約70年の歴史を刻んできた枚方団地で長く暮らしてこられた實金(みかね)さんと西森さんに、当時の暮らしや時代の移り変わりについてお話を伺いました。当時の団地での生活を振り返り、変わりゆく風景とともに残る思い出を語っていただきました。

写真左から 西森さん、實金さん
写真左から 西森さん、實金さん

半世紀を過ごした枚方団地での暮らし

Q: 枚方団地にはいつ頃からお住まいでしたか?

西森さん: 私は25歳くらいの時にここに引っ越してきました。それ以来、人生の半分以上をこの場所で過ごしました。

實金さん: 私も同じくらいの頃に引っ越してきました。元々は大阪市内に住んでいたんですが、知り合いの紹介で枚方に移ってきました。当時は枚方=都会ではないというイメージがあったんですが、住んでみるととても住みやすく、すぐに気に入りました。

___ 人生の半分以上とは、本当に長い時間ですね!枚方市駅前の地域は、今と変わらず当時からとても住みやすい場所だったのですね。

Q: お住まいだった当時のご家族構成を教えてください。

實金さん: 私は一人暮らしでした。仕事をしていた頃は、ほとんど寝に帰るだけの生活でしたが、枚方市駅発の電車があり通勤にも便利でした。帰りも駅から近くタクシーを使わなくても良かったので安心して暮らせました。

西森さん: 私は母と姉の三人暮らしでした。枚方市内から引っ越してきて、ずっとこの場所で生活してきました。

___ 働きながら暮らしていると駅からの近さや利便性はとても重要なポイントですね。

Q: 当時の枚方団地の周辺はどんな街並みでしたか?

實金さん: 近くに市場があったのを覚えています。

西森さん: そうですね、今のビオルネの場所には商店街もありました。スーパーも多くて便利でしたが、時代と共に少しずつ変わってきましたね。

實金さん: 駅前には近鉄百貨店や三越デパートもあって、大阪や京都に行かなくても買い物ができて便利でした。百貨店がなくなってしまったのは本当に寂しかったです。

西森さん: 私も百貨店の閉店は寂しかったですね。イズミヤにもよく行きました。

實金さん: 駅は高架になり、時代と共により便利になったなという印象です。

___ 当時、枚方に住んでいた人たちにとって百貨店は必要な場所だったのですね。商店街がスーパーになったり、駅が平面から高架になったりと街が大きく変化してきたのですね。

インタビュー中の写真

屋上での洗濯で生まれた住民同士の交流

Q: 団地ならではの「あるある」はありますか?

西森さん: 当時はベランダがなかったので、洗濯物を屋上に干しに行っていました。皆が干しているわけではなかったので、好きなだけ干せて便利でした。屋上では団地の住人の方と顔を合わせて挨拶をしたり、雨が降りそうな時には他の住人が教えてくれたりすることもありました。とても良い交流だったと思います。屋上からは花火大会も見れて、それも良い思い出です。

實金さん: 私も屋上に洗濯物を干しに行っていました。洗濯機は台所に置いていて、排水はお風呂場に流していました。

西森さん: お風呂場は広かったので、たらいを置いて手洗いもできて、とても使いやすかったですね。

實金さん: 部屋の中に出窓があったので、そこで少しですがお花を育てて楽しんでいました。団地の集会所では麻雀や民謡・パソコン教室も開催されていて参加している人もいましたね。

___ 屋上で洗濯物を干す光景は、今ではなかなか見られないですよね。当時の団地ならではの生活スタイルや住人同士の自然な交流が、とても温かく感じられます。現代ではそうした日常的なコミュニケーションが少なくなりつつありますが、こうした思い出が今も心に残っているのは素敵なことですね。

屋上の物干しスペース
屋上の物干しスペース

Q: 昔と今では、住人同士での交流スタイルに違いを感じることはありますか?

西森さん: そうですね。建替えに伴う引っ越しの時、同じ棟や自治会の会長さんに挨拶しましたが、今は挨拶する人が減っているように感じます。表札も出していないので誰がどこに住んでいるのか分からないこともあります。

實金さん: 周りとの関わりを持ちたくない人も増えたのかもしれませんね。昔は父兄会などで周辺の人たちと顔を合わせる機会が多かったのですが、今は少なくなりました。団地の中も子どもが減り、公園も草が生えてしまって寂しくなりましたね。

___ 時代と共にご近所付き合いや生活スタイルは変化してきましたが、その中でも日常的な挨拶などはこれからの時代でも大切にしたいですね。

団地の建替えをきっかけに深まった友情

Q: お二人はどのような経緯で親しくなったのですか?

實金さん: 今回の建替プロジェクトで引っ越しすることになり、話す機会が増えました。

西森さん: それまでは實金さんが団地周りの草引きや、お花を手入れしていたのを見かけていましたが話すことはなかったですね。引っ越しを機に話すようになり今では仲の良いお友達です。

實金さん: 仕事をしている時はできなかったんですが、リタイアしてからは時間ができて手入れを始めました。

西森さん: 今は枚方団地とは別の団地に住んでいて、棟は違いますが、向かいの棟なので洗濯物や明かりが見えると安心しますね。

實金さん: 少しでも知り合いが近くにいると心強いですよね。

___ お互いに支え合える友人が近くにいることで、日常生活に安心感が増すのも団地ならではの温かさを感じます。

インタビュー中の写真

心に残り続ける、思い出の桜の木

Q: 建替プロジェクトの話を聞いた時はどう思われましたか?

實金さん: 何度か建替えの話はあったのですが、実現しなかったので、今回も「本当かな?」と思いました。決まった時はやっぱり悲しかったです。また新しい場所で人間関係を一から作ることへの不安もありましたね。

西森さん: 建物が壊れていく様子を見た時は、ここにあれがあったな、と色んなことを思い出して涙が出てきました。

___ 長い間暮らしてきた場所がなくなることは、想像以上に寂しく不安だと思います。それだけたくさんの思い出を紡いでこられた場所だったのですね。

Q: 写真に映る大きな桜の木が印象的ですが、皆さんにとっても特別な存在でしたか?

實金さん: 毎年、団地内の桜の木がとても綺麗で、それを見るのが楽しみでした。この場所に住んでいた人や近所の人もこの道を通って、綺麗だねと写真を撮っていましたね。

西森さん: この団地に住む人にとってシンボルツリーのような感じで毎年楽しみでした。

___ 団地のシンボルとして住民たちに愛された桜の木。建替えに伴い惜しまれながら姿を消してしまいましたが、お二人がその風景を心の中に大切にしまっていることを感じ、こちらも温かな気持ちになりました。

枚方団地建替前の桜の木
枚方団地建替前の桜の木

長年、枚方団地で大切な時間を過ごされたお二人。これからの新しい生活でも、笑顔とともに素敵な時間を積み重ねていかれることを願っています。

大阪府住宅供給公社スタッフと實金さん、西森さん
大阪府住宅供給公社スタッフと實金さん、西森さん

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