過去・現在・未来

地域に開かれた「第二の実家」へ――「てしまの森」が育む、親子の笑顔とコミュニティ

石橋テラス外観

大阪府池田市、OPH石橋テラス(旧・石橋西団地)の敷地内にある、地域子育て支援拠点「てしまの森」。概ね3歳までの子どもと、その保護者が家庭で安心して子育てできるようサポートするこの場所は、2021年6月の開設以来、地域に暮らす多くの親子にとって、かけがえのない存在となっています。

なぜこの地域子育て支援拠点が団地の敷地内に誕生したのか。そして、日々どのような思いで運営されているのか――。開設に携わった池田市子育て支援課の大西さんと、運営責任者の吉田さんに、施設の誕生秘話から運営のリアルな声まで、詳しくお話をうかがいました。

インタビューにご協力いただいた吉田さん(「てしまの森」運営責任者)、大西さん(池田市子育て支援課)
インタビューにご協力いただいた
吉田さん(「てしまの森」運営責任者)、大西さん(池田市子育て支援課)

親子の交流と相談の場。誰もがふらっと立ち寄れる「てしまの森」

Q: まずは「てしまの森」がどのような場所か、教えてください。

吉田さん: ここは、概ね0歳から3歳までのお子さんと保護者が利用しています。他の親子さんと交流したり、スタッフに子育ての悩みを相談したりできます。保育園とは違い、基本的には親御さんが、お子さんの安全を見守りながら一緒に遊んでいただく場所となっています。

てしまの森内観 てしまの森外観
OPH石橋テラスの敷地内にある「てしまの森」

吉田さん: 相談といっても堅苦しいものではなく、ふらっと来られて、お母さんの気持ちが和んできたところでお話しされることも多いです。もちろん、事前にご予約いただき、1対1でじっくりお話しすることもできます。OPH石橋テラスの敷地内にあるので、お住まいの方が「ちょっと相談いいですか?」と来られることもありますよ。リピーターの方も多く、池田市内だけでなく、市外から「ここが気に入ったから」と来てくださる方もいらっしゃいます。

大西さん: 池田市内には、他にも4つの地域子育て支援拠点があります。また、地域の方が開催する子育てサロンなどもありますが、それらは毎日開いているわけではありません。ここは週5日開いている「常設」の拠点であり、いつでも来られる場所だということが大きな特徴です。

吉田さん: そうですね。いつでも気軽に遊びに来ていただけるのに加え、月に数回はイベントや講座も開催しています。ここの運営は(地元の)こども園が主に関わっていますので、月に2回はこども園とコラボし、園庭で泥んこ遊びをしたり、大きなプールで遊んだりもします。

施設内では、おもちゃ作りや、お子さんのヘアピン作り、お母さん自身のリフレッシュのためのオリジナルバッグ作りなども人気です。こうした活動を楽しんだり、悩みを話してリフレッシュしたり。そうしてお母さんの気持ちが落ち着いていることが、お子さんにとっても一番良いことだと思っています。

月に数回行われる、様々なイベントやワークショップ
月に数回行われる、様々なイベントやワークショップ

「渡りに船」だった公社からの提案。施設誕生までの経緯

Q: 「てしまの森」が誕生したきっかけや、開設までの経緯を教えてください。

大西さん: 「てしまの森」のようなこの取組は「地域子育て支援拠点事業」という国の事業の一つで、池田市でも計画に基づいて整備を進めてきました。当時、この石橋エリアには拠点が1カ所しかなく、計画上もう1カ所開設したいという思いがあったものの、場所の確保がなかなか難しくて。そんな中、2017年に大阪府住宅供給公社さんから、「石橋西団地を建替えるにあたり、団地内で何か池田市と事業連携できることはありませんか」という申し出をいただいたんです。まさに「渡りに船」でした。そこから協議を進め、実現に至りました。

開設にあたって重視したのは、「敷居が低く、足を運びやすい場所」であることです。運営事業者は公募で選定し、吉田さんが在籍されている(地元こども園の)亀之森住吉学園に受託していただくことになりました。おもちゃや室内の環境についても専門の事業者を公募で選定し、この取組にあった空間を作っていきました。

インタビュー風景
てしまの森内観

子育てもシニアの暮らしも。「環境がいい」と人が戻ってくる地域

Q: てしまの森がある「旧・石橋西団地」周辺は、元々どのような地域でしたか?

吉田さん: 実は私自身、ここの運営が決まってから「てしまの森」に通うようになったので、この地域をあまりよく知らなかったんです。ただ、ここで運営を始めてから気づいたことがあります。それは、一旦大阪を出て他府県に行かれた方が、最終的に「やっぱりここの環境がいい」と実家に戻って来られて、この地域の住民になっている方がすごく多いな、ということです。

(お母さん同士が)「幼稚園の時からのお友達なの」と言って、お誘い合わせの上でここに来てくださる方もいます。ですから、ここは子育てをする環境としても、あるいは高齢の方が住む環境としても、とても良いものがある場所なんじゃないかな、と想像しています。

石橋テラス外観

「子どもが一番笑っているから」。運営エピソードと「第二の実家」への想い

Q: てしまの森の運営に携わられる中で、感じたことや、印象に残るエピソードがあれば教えてください。

吉田さん: ご相談で多いのは、離乳食や睡眠、発達に関することですね。「夜泣きが大変で眠れない」「他の子と比べて発達は大丈夫か」といった不安を抱えているお母さんが多いです。印象的なのは、皆さんの「変化」です。最初は親子ともに緊張して、お母さんの膝の上で動かなかったお子さんが、慣れてくると部屋の端から端まで元気に動き回るようになります。そうすると、お母さんたちも表情が和らぎ、本来の自分を出してくれるようになるんです。「ここに遊びに来ると子どもがよく笑うんです」と言ってくださった方もいました。

また、「子どもは愛しているけれど、子育てが大変すぎて、もう限界だと感じてしまう」と悩んでいるお母さんや、「実家には頼れない」と1人で頑張っているお母さんもいらっしゃいます。そういう方には「1人で子育てしないほうがいいよ」とお伝えしています。ここに来て、同じ悩みを持つ仲間と出会い、「自分だけじゃなかった」と思えるだけで、すごく気持ちが楽になるんですね。

てしまの森インタビューの様子

Q: てしまの森は、子育て世代にとってどんな意味を持つと感じますか?

大西さん: まさに、親御さんが深刻な状況になる手前で、子育ての不安や負担を和らげる場所として、大きな意味があると思っています。市の相談窓口などは、どうしても敷居が高いと感じてしまう方もいらっしゃいますから。

吉田さん: お母さんたちの「リフレッシュの場所」ですね。帰る時に「はぁ、楽しかったね」ってお子さんに声をかけている姿を見ると、心が軽くなったんだな、と感じます。慣れてくると、入室しながら「もう、吉田さん聞いてください!」って入ってくるお母さんもおられるんですよ(笑)。私の思いとしては、お母さんたちにとっての「第二の実家」になれたらな、と思っています。

大西さん: 吉田さん、最初の頃におっしゃっていましたよね。「私は『てしまの母』を目指すんだ」って。

吉田さん: そう言っていたみたいです(笑)。

大西さん: 今は核家族化が進んで、地域のつながりも薄くなっていると言われますよね。昔なら、近所にちょっとおせっかいだけど気にかけてくれるおじちゃんやおばちゃんがいて、みんなで子どもを見守るような雰囲気がありましたが、今は地域での関わりが少なくなりました。結果として、子育ての不安や負担を一人で抱え込んでしまい、誰にも頼れないままになってしまう方が増えています。「てしまの森」は、こうした孤立を防ぐための場所なんです。ここに来ていただくことで、親御さんの不安を和らげて、お子さんが健やかに育つお手伝いができればと考えています。

大きな窓から地域とつながる。団地の中にある良さと未来の姿

Q: てしまの森がこの場所(OPH石橋テラスの敷地内)にあるからこそ、良かったと感じることがあれば教えてください。

大西さん: OPH石橋テラスは昔から地域に馴染みのある石橋西団地が建替わった場所ですし、近くの小学校の通学路の途中ということもあり、最近では小学生の登下校の見守りスポットにもなっていると聞いています。地域の子育て支援の中心として、本当にふさわしい場所だと感じています。

吉田さん: すぐ近くの小学校の子どもたちが、「ただいま」って毎日寄ってくれるんですよ。赤ちゃんが大好きだから見たいって、窓から手を振って帰って行くんです。

なにより、施設やこども園の一室とかではなく、独立した「おうちみたいな感じ」の戸建てになっている、というのが大きいですね。そして、この2面の大きな「掃き出し窓」。カーテンを開けていると、地域の方がここを通るたび、中の様子を見ていらっしゃって、団地の方もお買い物に行くときに声をかけてくださいます。最近はごみ収集車の方とも手を振り合うほど、日常的な交流が生まれています。

オープンして3年以上経ち、今では「うちにおもちゃがあるけど」「こんな講座できますけど」と地域の方から関わってくださることも増えました。この窓とウッドデッキがあることで、自然と地域に溶け込めているのを感じます。

石橋西団地の居室 石橋西団地の浴室

Q: 今後、てしまの森をどんな場所に育てていきたいですか?

吉田さん: 今、来てくださるお母さんや子どもたちに喜んでもらえている実感があるので、まずはこの良い状態を大切にしていきたいですね。これからも皆さんの声に耳を傾けながら、時代やニーズに合わせ、地に足のついた取り組みを続けていきたいと思っています。

大西さん: 市としても、「子育ての不安を和らげ、子どもの健やかな育ちを支援する」というこの場所の役割を大切にしながら、より多くの方が必要な支援につながるよう、引き続き吉田さんたちと協力していきたいですね。相談対応の質の向上なども含め、取り組みを充実させていけたらと思っています。

吉田さん: そうですね。それから、この団地の一角にあるという場所柄、団地住民の方との共同イベントなどもぜひ行っていきたいですね。最近はこういった団地でのコミュニケーションも減ってきているようですので、例えばお住まいの方々がここに来て、ふれあう機会を作るとか、そういった地域交流の一助になれたらうれしいです。

インタビュー風景
てしまの森内観

「おうち」のような独立した戸建て、そして内と外を緩やかにつなぐ大きな掃き出し窓。OPH石橋テラスの敷地内にある「てしまの森」は、単なる子育て支援の枠を超えた存在です。その開放的な空間を通じて小学生や団地の住民と自然につながる、地域交流の場としての役割を担っています。団地の一角にあるこのあたたかい場所は、これからも地域の子育てを支え、多くの笑顔と新しいつながりを育んでいくことでしょう。

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